HONMA STORY

HONMA STORY 次世代につなげる

カーボンニュートラルを支える

再生可能な生物資源である木質ペレットなどを原料とするバイオマス発電。カーボンニュートラルを実現する発電方法のひとつであり、日本各地で建設が増えています。令和3年6月、吉川所長以下4名の社員は、山形県飽海郡遊佐町で計画された県内出力規模最大となる鳥海南バイオマス発電所建設に携わりました。これは、本間組にとって初めてのバイオマス発電所建設であり、スケールの大きな工事です。担当社員の新たな挑戦の軌跡をたどります。

持続可能な社会実現のための発電所を造る

発電所が建設される遊佐町は、山形県最北部に位置する人口12000人ほどの町です。その一画にある鳥海南工業団地に、大規模なバイオマス発電所建設が計画され、本間組はJVに参加しました。担当するのは、発電所建設のための土地の造成とプラント基礎の建設、管理棟建屋の建築です。

COを吸収して成長する木材資源を燃料として発電を行うバイオマス発電は、脱炭素社会構築のための有力な発電方法です。太陽光や風力発電と比べ、天候に関わらず安定的に運転が可能なこと、発電時に出る熱のエネルギー効率が高いことから、注目を集めています。持続可能な社会の構築に寄与するという社会的使命を果たすため、また、バイオマス発電所建設という新分野でのフィールドを拡大するため、吉川、望月、津田、嵯峨の4名が挑みました。

海風と雪、寒波が行く手を阻む

マンションやショッピングセンターといった一般的な構造物と異なり、巨大な発電設備を支える基礎は、規模や要求水準、施工方法、スケジュールなどでいくつもの「初」や「想定外」がありました。

建設場所は日本海に面した酒田北港から約10分の堆積砂丘の上。土質条件はよく、地下水位も低いため土木工事はスムーズに運ぶかと思われました。しかし、庄内地方は1年を通して日本海からの強風が吹き荒れる地域で、着工した令和3年の冬は豪雪となりました。また、令和4年には豪雪に加え大寒波。「工期を考えると、悪天候で工事を止めるわけにはいきません。最低気温がマイナス10度を下回った時には昼夜融雪しながら、また時には、仮設の屋根をかけて降雪をさえぎりながら工事を進めました」と、吉川は冬期工事の大変さを振り返ります。

工期についてはもうひとつ大きな課題がありました。「プラントの基礎は建築基準法による確認申請が不要のため、通常の建築物よりも設計図が届く時期が遅く、現場の対応に苦労しました。設計図の確認や具体的な施工方法や順番、必要部材の発注、施工図の作成に反映する時間が短かったのは想定外のことでした。現場では、専門業者の皆さんが効率的かつ手戻りなく作業を進められるよう、コミュニケーションを取りながら協力して進めてきました。皆さんとても真面目で仕事もしっかりやってくれましたし、当社は隣の酒田市に山形営業所を構えており、周辺地域と深く関わってきた歴史もありますので、仕事をするうえで確かな信頼関係を結ぶことができています」。工事規模は大きく、検討・準備の時間は短い――吉川はスピード感を持って対応するため本社や支店、専門業者などの協力を得て、その難局を乗り切りました。

地域の人たちの期待が原動力だ

鳥海南バイオマス発電所は、木質ペレットをボイラーで燃焼させてタービンを回し、発電機を動かす直接燃焼方式を採用しています。そのタービンやボイラーの巨大さは、経験豊富な吉川でさえ圧倒されるほどのもの。「これまでにゴミ焼却場建設でもボイラーを見てきましたが、スケールが全然違いました」。その基礎を令和5年春に完成させ、プラント工事にバトンタッチします。

「工事を担当することが決まって、改めてバイオマス発電について調べました。最近よく言われるカーボンニュートラルにつながる発電方法だということで、とても興味がわきました。工事を始めると、地域の代表の方から『期待しているよ!』という言葉をかけてもらい、地元の人たちからの期待感もひしひしと感じ、身が引き締まる思いです。地域のためになる仕事をしているという手ごたえも感じています」。

BIMで品質と効率の向上を実現

望月は令和4年9月にこの工事に参加しました。「実は所長の働き掛けもあり、自分の持つBIMの知識を活かせる機会をいただきました」とにっこり。望月は本間組建築事業本部のBIM推進委員のメンバーで、モデラーのリーダー。今回はその知識と技術を活かし、工事の生産効率や、コミュニケーションと理解度のアップおよび専門業者を含めた関係者間の情報共有がミッションでした。「そして、所長が抱える課題や施工管理のポイントを可視化し、工事の全貌を明らかにすることが私に任された仕事です」。

1カ月で工事の全データをインプットし、コンピュータ上に現場の3次元モデルを再現。10月からは、位置関係の把握、干渉の有無、作業手順の確認など様々な業務を画面上で管理できるようにしました。その結果、図面のミスマッチや確認・調整業務が減り、作業の質と効率が上がりました。

今回のケースは本間組にとって施工面でのBIM活用の先駆的な取り組みになりました。「この事例を今後に活かしていきたい、BIM活用を更に広げていきたいと思います」と、望月は先を見据えています。

コミュニケーションこそ信頼関係の礎

鳥海南バイオマス発電所では本間組は多種多様なコンクリート製基礎を建設しました。入社2年目の嵯峨にとっては、現場のスケールも作業の難易度もこれまでの現場とは大きく異なり、戸惑うことが多々ありました。そういうとき、所長や先輩はもちろん、他社の人たちにも助けられたと言います。「厚さ2mのマットスラブの打設に際し、水平打ち継ぎの施工方法を思案している時に、専門業者から最適な処理剤の提案をもらい、上手く活かすことができました。また、JV構成員の方からは、どんな時もメモを取りながら話を聞くといいとのアドバイスを頂き、物事を段取り良く進めることができるようになりました」。多くの人が会社や分野の垣根を超えて協働する建設現場では、いかに信頼関係を築くかが重要だと嵯峨は学んだと言います。

津田も「建設業では仕事の7割は人への対応」と考え、コミュニケーションを大切にしています。入社9年目を迎え、年齢的にも上と下をつなぐポジションであり、後輩の指導も任されています。「指導というより、一緒に動きながら相手の考えを引き出しつつ、自分の考えを伝えるようにしています。一方的でなく、相手の受け取り方も考えながら進めています」。こうした姿勢が確かな協力体制を生み、和やかな雰囲気を生み出しています。

新しいエネルギー事業に関わった手応え

令和3年6月に吉川らが着任した時、雑木林だった建設地を造成し土地は拓かれ、本間組が担当したプラントの基礎は完成。プラント設備の据え付けが始まっています。「今回は大規模工事の施工でずっと山場が続きました。冬期に工期が遅れ、挽回のために施工計画を練り直すことが何度もありました。が、やっとここまで来ました」。大きな山場は超えましたが、基礎以外にも建屋、外構工事と続くのでまだ気は抜けません。

令和6年4月に本間組の担当工事は終了し、試運転工事を経て、令和6年秋に電力供給が始まります。「カーボンニュートラルに貢献するバイオマス発電所建設に関わったことは、単にスケールの大きな建設の経験を積んだだけでなく、新しいエネルギー事業に関わり、持続可能な社会の構築に貢献したというやりがいに繋がりました」と吉川。ここから本間組の新しい歴史が始まっていくのです。

工事の記録

鳥海南バイオマス発電所新設工事について、本間組の担当工事の開始から、工事の状況をドローンで定点撮影しましたのでぜひご覧ください。

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本工事について

工事名 鳥海南バイオマス発電所新設工事
施工地 山形県飽海郡遊佐町藤崎字茂り松157番地33 鳥海南工業団地内
工期 2021年6月15日~2024年10月31日
面積 敷地:50,313.23平方メートル
建築:626.97平方メートル
延床:1,250.04平方メートル
構造 鉄骨造(事務所棟)
地上:2階
軒高:10.0 m
最高高さ:10.7m
地下深さ:GL-2.0m
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